
1980年代に「デトロイトテクノ」というジャンルを創設した一人。大手レコード会社からの数百万ドルの契約を「アーティストとして真に取り扱ってくれず、エンターテイナーとして見られていた」ため、自身のレーベル「TRANSMAT」を立ち上げて大成功させると共に、ジャンルを問わず多忙なスケジュールで世界中を駆け巡る超大御所DJ/プロデューサー、DERRICK MAY (デリック・メイ) 。バンコクの日本人を代表して、「SIAM GROOVE」のスリ氏も交えてインタビューしました。
■前回、バンコクを訪問したのが10年前と聞きましたが、当時はどうでしたか?
そうだね、前回タイに来たのは丁度10年前の1997年で、当時のナンバー1クラブ、ナルシサス (NARCISSUS/スクンビット通りソイ23) で回したんだよね。ナルシサスはその時はまだ新しいクラブで、他に大きなクラブもなかったし、インターナショナルDJとしてイベントをしたのは自分とPAUL OAKENFOLDくらいじゃないかな。10年前ということもあり、まだタイでは知名度が全然なくて、フロアには50人くらいかな?とにかく10、感じで散々だったね (笑) 。
■今回、TWISTED REPUBLICでのイベントでしたが、そのいきさつについて教えて下さい。
TWISTEDは新しいクラブで決して大規模でもなく、これからどのような客層を狙うかが勝負なんだけど、TWISTEDを選んだ一つの理由は、対応が良かった点。他のクラブは反応が遅かった。TWISTEDはとても熱心で、経営チームの真剣さや、何かをしてやろうという心意気からポテンシャルを感じられたんだ。バンコクで新しい方向性だとか、地元の若い人達に自分の音を聞かせたかったんだ。確かに、しっかりと知名度が確立された大きなクラブで回すのもいいけれど、自分の提供する音を通して来てくれる人達といかに近くなれるか、という点について言えば、TWISTEDが絶好の場所だと思って今回訪タイに繋がったんだよ。
■バンコクにはいつ到着しましたか?また、どのように過ごされましたか?
イベントの5日前。その間、色々したよ。観光したり、10年前と比べてバンコクがどう変わったのか見て周ったり、リラックスしたりとね。やっぱり自分で見て廻らないと本当の自分の経験にならないから。でもバンコクも随分変わったね。誰もが金儲け主義に走ってしまったり、過剰な商業化が進行したり、あまりそういうのは見たくないなあ。土地の近代化においては仕方のない流れだけれど、良いところは失ってほしくないと思うよ。
■昨日のイベントは朝4時までお疲れ様でした。昨日の観客はいかがでしたか?
最高だったよ!時間ギリギリの00:00過ぎにTWISTEDに到着したんだけど、観客は皆待ち侘びてたかのように空気がピリッとしていて、DJブースに入って回し始めたらもう最初から皆飛びまくってたね。そういう歓迎を受けると、やっぱり嬉しいよ。
■(スリ氏) 僕は10年前のナルシサスのときもフロアにいたけど、今回TWISTEDの客層は、周りの人間と色々話してみたら、デリックのDJを聞いたことがあって、是非またあの音が聞きたい、ってことで足を運んだ人が実に多かったよ。
そうなんだ。本当に有難いね、そうやって何度も聞きたいと思ってくれている人たちがいるっていうのは。でも正直言うと、昨日はサウンドシステムがイマイチだったんだ。サウンド・チェックを怠ってた自分も悪いんだけど、思うような音が出なくてすごく残念。その点については、お返しする機会があるからね (この発言の意図は、インタビュー記事を続けて読めば、意味が解ります) 。
■昨日のイベントのハイライトは?
やっぱり朝4時まで沢山の客がいたことだね!フロアがのってくると、こっちもそれに答えなきゃと思って負けてられない感じで回し続けるんだよね。うん、とてもいい夜だったよ。
■2008年の予定は?
まず、今日はTWISTEDのオーナーと話をしていて、また是非DJをしてほしいと誘いがあったんだ。だから、先程の「お返し」って言う意味において、次回は早めにサウンドシステムの改善に自分もしっかりと関わり、自分が求める音を出せる環境に整えて、皆を満足させるものを提供するよ。3ヵ月後くらいになるだろうから、楽しみにしていてね。
バンコクに戻って来ること以外の来年の予定は、そうだね、色々な人に「最近何してるの?あまり表立って名前聞かないけど?」と聞かれるんだけど、一見あまり何もしてない様に見えて本当に忙しいんだ。以前みたいに表舞台に大きく名前が出るような活動を多くしていないだけで、2008年もすごく忙しくなる予定。アメリカのJCVと共同で映画のサウンドトラック制作だとか、MINISTRY OF SOUNDとのコラボでミックスCDも出すんだよ。
■最近はプレイステーションの「甲殻機動隊」のサウンドトラックへの曲の提供後、アニメ映画「鉄コン筋クリート」のサウンドトラックのリミックスも手掛けたそうですが、自身のレーベル「TRANSMAT」から要注目の新しいアーティストや曲は?また、何か業界での気になるニュースなどありますか?
2週間程前、日本に滞在中に本当に悲しい知らせがあったんだ。あのCISCO RECORDS全店が閉店したんだ。日本は大好きで、トイレくらい小さいけど (笑) 東京にアパートも持ってるくらい。東京はレコード探しにうってつけだしね。CISCO RECORDSがなくなる話を聞いたとき、とても信じられなくてCISCOの社長に聞いてみたんだ。そしたら、今後はオンラインでの通信販売に特化すると言ってた。本当にショックだったよ。レコードが段々なくなり、音のデジタル化が進んでいくのはつらい。ショップでレコードを実際に手に取って時間を過ごすのと比べて、音探しのためにインターネットをサーフしてクリックして、という行為の味気なさと言ったらたまらないよ。
TRANSMAT関連ニュースなら、STEPHEN BROWNやAPRIL BRIKHAの新しいアルバムをリリースしたばかり。今TRANSMATもどんどんデジタルにシフトしている動きがあるため忙しいけれど、今後もレコードはレコードファンのために例えば限定で1,000枚販売したりするよ。
■最近、仕事外の時間でどんな音楽を聞いていますか?
普段はダンスミュージックは全くと言って良い程聞かないよ。何でも聞くけど、よく聞くのはジャズ。
■最も印象に残っている、または楽しかった過去のイベントを挙げるとしたら?
1994年のイベントで、チリで皆既日食があった時はすごかった。アンデス山脈にステージを設定して、周りはとにかく大自然。最高に盛り上がったよ。他にも日本でのイベントも横浜で回したのが楽しかった。日本は自分のサポーターが多く、マーケットとしても最も重要な場所の一つでね。北海道から沖縄まで小さな街も沢山足を運んで、いつ行っても楽しいよ。
■デリックさんにとってクラブという空間はどんな場所ですか?
自分にとって、クラブはとても特別な場所なんだ。勿論音を楽しむための場所だけれど、自分はいつも最初にその空間に入ったときのフィーリングと第一印象を大切にしてる。各自色々な見方があるとは思うけど、自分にとって、クラブを全体として見たときにどんな気持ちになり、そこからどんな音が合うかを見付けるのが重要。そういう意味で日本には良質のクラブが多いよね。東京の「AGEHA」っていうクラブのサウンドシステムに自分も関わったんだ。音質についてはうるさいよ (笑) 。
■最後に、昨日のイベントに来てくれたファンやDUDE-MAGAZINEの読者に一言お願いします。
FUCK YEAH! 昨日は最高だった!でも、個人的にTWISTEDの音質に納得がいかなかったのが本当に惜しい。自分にとって「音」は常にベストでなければ納得しないから。DJのテクニックよりも、場所よりも、機材よりも、いかなる「音」を出せるかがポイントなんだ。だから、次回、多分約3ヵ月後のパーティーでは最高の音で最高のDJをして、自分の「音」をプレゼントすることを約束するので期待していてね!
渋い大御所DJと言えども着飾らず、真面目で、特にレコード文化の衰退について熱く語ってくださった、とてつもなく良い印象をずしりと残していったデリック・メイさん。彼の「最高の音」を提供するDJセッションを3ヵ月後に約束され、DUDE=MAGAZINEインタビュアー一同、今から期待せずにはいられない状況だったことを最後に申し上げます。13日の彼のイベントに行かれた方はご存知のように、あの逞しい腕と繊細な指先で新旧譜織り交ぜた熱いDJプレイに最高に盛り上がった夜でした。来年バンコクに再登場されるので、是非ともお見逃しなく!
DERRICK MAY関連リンク
デリック・メイ公式サイト:http://www.derrickmay.com
デリック・メイMYSPACE:http://www.myspace.com/derrickmay
TRANSMIT MYSPACE: HYPERLINK : http://www.myspace.com/transmatインタビュー:陽翠、NIWAYAMA、竹本
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